つみほ スレスレなるままに

現実と非現実の境目をふらふらと往き来するかのような日常の記録

お金渡すからタバコ買って来て欲しいと高校生にお願いされた事件

つい今しがた、ルクロのふすま塩パンを食べながら商店街を歩いていたら、ブレザー風の制服を着た高校生に声を掛けられた。

スススとすり寄るように近づいて来るから、信仰宗教の勧誘かと思ってそれとなく身構えた僕。目を合わせないでおこうと思ったのに、意識して視線ずらすのもヘンだしとか考えていたら目が合ってしまった。(´д` ;

寄ってきたのは僕とあまり背丈の変わらない、優しい目をした高校生。いやたぶん高校生じゃないかと思うだけで確証はないんだけど。

表情に寸分違わない優しい声で

「スミマセン。お金を渡すので、タバコを買って来て貰えませんか。」

スマヌ、人選を誤ったな少年よ。

僕はタバコを吸わない人間なのだ。というか、ずいぶん昔にやめた。吸っていた当時は、年齢にしたらかなりのヘビースモーカーだったと思うんだけど、すっかり抜けてる。

もっとも、全く吸ったことがない人たちに比べたら耐性はあるようで、飲み会などで周りの連中がタバコを吸っていてもさほどは気にならない。強いて言えば、美味い料理食べてるときは控えて欲しいとは思うけどね。

そんな僕は、長いことタバコを買ってない。当然と言えば当然な話なんだけど、周りにタバコがやめられない人たちがたくさんいるせいで、タバコの買い方が昔と今とでは違うということは知っている。特に、自販機で買う方法なんて劇的に変わったから、否が応でも頭にこびりついている。

高校生に、タバコの斡旋をお願いされたとき、真っ先に頭に浮かんだのか自販機で買うという方法だった。

2007年12月のプレ運用から2008年7月には日本全国に広がった施策によって、自販機でタバコを買うにはTaspoカードが必要になった。Taspoカードには成人識別用のICチップが埋め込まれている。自販機では利用者がタバコを買うときに成人かどうかを事前確認できないから、予め登録して貰うことで、未成年者の喫煙を間接的に防止するという狙いがある。

一方で抜け道がいっぱいあるという指摘もある。自販機で買うことに関しては、今回みたいに成人でTaspoカードの所持者が代理購入してしまえば意味がない。

またコンビニなどではTaspoカードの提示は必要がない。対面で事前に年齢確認ができるからというのが理由のようだが、年齢を詐称しても確認の術はないのが実情。

客がよほど幼顔だったり、学生服を着ているなど明らかに未成年の風貌、風体をしていれば、店員が客に身分証明書の提示を求めたりするトリガーにもなりようがあるだろう。でも私服姿だったりフケ顔だったりといった場合には、なかなか難しいものがある。身分証明書の提示が義務づけられればある程度は抑止力が働くだろうとは思うが、これも自販機同様に、成人が代理購入をしてしまえば防ぎようはないのだ。

近年、この問題の解決策として認知されつつあるのが、マイナンバーカードを活用する方法と言われている。マイナンバーカードは普及率の面ではまだまだ感が強いものの、行政が導入を全面的に後押ししていることもあり、いずれすべての国民がマイナンバーカードの管理下に入ることになるだろう。

今はかなり限定されたサービスを享受できるに過ぎないマイナンバーカードも、いずれは様々な、行政以外のサービスとも連携していくと思われる。それこそ個人の体調管理など、現在はスマホアプリ単体で個人の自由に任されている内容が、国家的な施策としての一大プロジェクトとしてマイナンバーカードをベースに展開されていく。そのような未来もそう遠くないように思う。

ならばである。

例えばTaspoカードで実現している成人識別は、マイナンバーカードならもっと確実だろう。本人の喫煙歴や健康状態とリンクして、保健事業に生かしたり、定期的な健診を促すようなサポートも可能になる。

先の代理購入にしても、タバコの購入にはマイナンバーカードが必要となれば、Taspoカードや対面の年齢確認などに比べてかなり敷居が高くなるに違いない。

しかもそのようにして購入した履歴が一定期間データとして残り、健康リスクに反映されるようなことになるとしたら、流石に安請け合いはできなくなるだろう。

いかに外見を偽っても、マイナンバーカードは騙されない。年齢詐称など基本的にできなくなるからだ。

そうやっても抜け穴はあるだろう。でも現状に比べたら、遥かに抑止力は向上すると考えている。

さて、自販機で買うことしか思い浮かばなかった僕は、その少年に

「ごめんやけど、タバコを買うのに使うカードみたいなやつ、持ってないんだ」

と伝えた。少年は頷いて離れていった。

未成年者はタバコ吸っちゃダメだとか、そういうことを伝えたほうが良いのかもしれない。けれど、彼自身が吸うためにタバコを買おうとしていたのか、親など誰かに頼まれたのか、背景が分からない状況の中、そういう先入観で話をするのはナンセンスだと思う。

おそらく、そんな風に見ず知らずの人間に声をかけるのは、かなり勇気が要っただろうと思うんだ。

飛躍し過ぎかもしれないけど、彼にはぜひ実りのある人生を歩んで貰いたい。