つみほ スレスレなるままに

現実と非現実の境目をふらふらと往き来するかのような日常の記録

大阪のチンチン電車〜その趨勢と沿線の見どころ

かつては市民の足、生活に欠かせないものとされていた路面電車。。

発車時にバネ仕掛けの合図鐘がチンチンと鳴るところから、チンチン電車という愛称で親しまれていると聞いたことがあります。

 

小さい頃東北地方に住んでいた私にはどちらかと言えば、細長いパンタグラフのようなものを行きと帰りでグルンと180度向きを変えるイメージが強かったのですが、それはトロリーバスというチンチン電車とは全く違う乗り物だと聞いて首を傾げた記憶があります。どこでどう重なったものか、私の記憶の中には確かにチンチン電車の思い出があるんです。。うーむ。。

逆にトロリーバスについては、いつだったか観た映画でふと目にした程度で、あの独特の形と独特の方向転換の仕方に目を見張った経験はあるものの、乗った記憶はありません。そもそもトロリーバスはバスというだけあって線路や軌道の上を走る乗り物ではなかったように思います。

 

さて、今はどちらかと言うと観光資源に位置付けられ、かつてのように広範囲をカバーする正に市民の足たる存在ではなくなって久しいチンチン電車ではありますが、ここ大阪では必ずしも観光資源とは言えない微妙な存在感を示す路面電車が大阪市内と堺市を結んで日々力強く走っています。

大阪のチンチン電車は正式名称を阪堺電気軌道といいまして、大阪市内はミナミに位置するえびす町駅、天王寺駅の両駅を起点に、堺市は浜寺公園駅までを結びます。

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大阪のチンチン電車『阪堺電気軌道』

10数年ほど前までは更に、上町線という天王寺駅と住之江公園駅を結ぶ路線が存在していましたが、利用客の激減から不採算路線となり、更に阪堺電気軌道社自体の経営が危うくなって存亡の危機に立たされた折、近くを、というより並行して走る南海電気鉄道のお世話になるに当たり廃線になったと聞いています。

 

それにしても、南海電気鉄道は太っ腹ですね。。

並走しているということは、阪堺電気軌道がなくなればおそらく阪堺電気軌道の利用客が全部とは言わずとも一部は南海電気鉄道のお客になるはず・・・。

そう言えば阪堺電気軌道の経営が思わしくなくなったとき、南海に助けて貰う、という話が出たものの、そしたら南海に吸収され阪堺は解体されてしまうだろう、という憶測が飛び交っていた時期がありました。

南海にしても、ただの義侠心から阪堺を助けその名を残したという訳ではないでしょう。でもその経営判断は南海の株を上げたと思うし、ある意味「損して得とれ」の真骨頂!これぞ関西人(大阪人)の心意気!!ってところでしょうか。。

 

さてさて、阪堺電気軌道の起点駅の一つえびす町駅は、大阪ミナミの観光スポット通天閣のすぐ近くに位置します。そこから北に進むと、今は少し寂しくなりましたが、かつては関西の秋葉原と言われた日本橋電気街があります。

えびす町駅から発車する阪堺電車は、全てが我孫子道という乗り換え駅行きです。

我孫子道は大阪市内の最後の駅で、次の駅は大和川。文字通り大和川を渡った先の南詰めで、堺市内の最初の駅になります。

えびす町駅から我孫子道駅に到達するまでの途中に住吉大社があります。

住吉大社の真ん前にある住吉駅は阪堺電車のもう一つの起点駅である天王寺駅への乗り換え指定駅で、浜寺公園に向かわずに天王寺駅方面に向かうならここで乗り換えとなります。

 

ところで乗車運賃ですが、元々の設定金額は、市内運賃が200円(現在は210円)市外運賃が290円でした。つまり、大阪市内から堺市、堺市内から大阪市のように大和川を越境すると290円。堺市内のみ大阪市内のみで越境しなければ200円という料金体系だったわけですね。でもこの料金体系は、阪堺電車の存亡に関わる事態を招いてしまいました。

 

なぜなら、越境しないで大阪市内で動き回る人たちは、どれだけ長い距離を走っても200円です。一方で、越境する人は堺市最端の駅である大和川から大阪最端の駅である我孫子道までたった一駅乗っただけで290円です。

市内で乗り回す人が増えれば増えるほど阪堺電車の利用率は増えますが、利益率は低下の一途を辿ることになりました。ましてや街中を走る路面電車は、道路事情の影響をモロに受け時間通りに運行できることが奇跡とも言われます。

ゆったりのんびりと時間を気にせず乗るなら良いですが、通勤通学に利用するにはちょっと難儀な部分もあるんですね。

それでも市民の多く、特に堺市民の多くに愛されているらしく、堺市が支援する形で運賃が市内同額の均一料金になりました。

 

さて、我孫子道から大和川を経て堺市内に入ると堺市ゆかりの有名人を取り上げた記念館などがあります。

宿院という駅の近くには千利休、与謝野晶子の記念館(?)である「堺利晶の杜」というガラス張りの建物がありますし、阪堺線の周りには寺社が数多く存在しています。

 

更に南下すると路面路線は終わりを告げ、普通の線路によく似た軌道路線に入ります。そして終着は浜寺公園駅。

南海本線の浜寺公園前駅に隣接した駅で、夏場は店先でかき氷を売る和菓子屋さんがあります。

とても美味しいので、機会があればぜひ、ご賞味を!!